山県郡医師会学術講演会 2
今回は前立腺肥大症です。前立腺肥大症は前立腺の内腺という部分が腫大しておこります。主な症状は「尿が出にくい」です。出にくくなる機序には①大きくなった前立腺で直接尿道が圧迫される機械的閉塞と②交感神経系の刺激(内臓や血管を自動的に調節する神経である自律神経には、興奮モードの時に優位な交感神経とリラックスモードの時に優位な副交感神経があります)によって前立腺が収縮して尿道が圧迫される機能的閉塞、があります。出にくい、だけではなく残尿感、頻尿、夜間頻尿、尿失禁、などの症状がでることもあります。
診断には超音波検査が必須です。超音波で前立腺の大きさや排尿がちゃんとできているか(排尿後に膀胱に尿が残っていないかどうか)を調べます。また尿流測定といって、排尿の勢いを調べる検査を行うこともあります。重要なのは前立腺癌ではないという確認です。血液検査でPSA(前立腺特異抗原)を調べたり、直腸診で前立腺を触って異常がないかどうか確認します。前立腺癌は現在男性で最も多い癌ですから、ここは重要です。
治療には薬物療法と手術療法があります。薬物療法には、大きくなった前立腺を縮小させる薬剤と機能的な収縮を和らげて尿道をひろげる薬剤が複数あり、状況に応じて使い分けたり併用したりします。基本となる薬剤は尿道をひろげる薬剤であり、タムスロシン(先発商品名:ハルナール)、シロドシン(先発商品名:ユリーフ)、ナフトピジル(先発商品名:フリバス)の3剤です。タダラフィル(先発商品名:ザルティア)も同様の作用があります。デュタステリド(先発商品名:アボルブ)は前立腺を縮小させる薬剤ですが、中止してしばらくするともとに戻ります。これら5つの薬剤は、診療ガイドラインで推奨グレードAです。
薬剤で効果不十分な場合、排尿後も多くの尿が膀胱に残る場合、尿が出なくなった場合、などは手術療法を行います。麻酔をして、お腹を切らずに尿道から内視鏡を入れて、電気メスで大きくなった前立腺内腺を切除したり、レーザーで組織を蒸散させたりします。入院が必要です。稀に前立腺が巨大な場合には、お腹を切ることがあります。
次回は慢性前立腺炎です。