クリニックについて診療案内

診療内容

診療科目と領域

診療科目

泌尿器科

診療・
検査内容

前立腺肥大症、前立腺がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、腎細胞がん、過活動膀胱、尿路結石、腹圧性尿失禁、尿路感染症、男性更年期、夜尿症、慢性前立炎、精巣腫瘍、精巣捻転、性感染症、検診での異常、など

泌尿器科悪性腫瘍の診断・治療のアドバイスも得意としています。

診療時間

診療時間
08:30~13:00 -
15:00~18:00 -

★土曜日午後は13:30~16:00(受付は15:30まで)

【受付時間】午前12:30まで 午後14:45から
【休診日】木曜・日曜・祝日

当院は予約制ではありませんので、直接来院いただき受付してください。

症状について

このような症状はありませんか?

症状から考えられる疾患をあげています。疾患をクリックしていただきますと、その詳しい説明に移ります。
安心できる生活をお過ごしいただくためにも、なるべく早くご相談ください。

尿がでにくい、残尿感

  • 尿がでにくい、お腹に力を入れないと出ない
  • 尿の勢いが弱い、残尿感がある
  • 尿をするのに時間がかかる

など、尿を出すことに問題
ある症状の方

最近トイレが近い、尿が漏れる

  • 1日に何回もトイレにいく
  • トイレに行きたくなったら間に合わずに漏れる
  • くしゃみや走ったりしたら尿が漏れる

など、尿をためることに問題
ある症状の方

尿に血が混ざっていた

  • 痛みもなく、真っ赤な尿が出た
  • 尿をするとき、痛くて血が混じる
  • 尿に血が混じって、腰も痛い

など、尿そのものに問題
ある症状の方

おしっこの時に痛みを感じた

  • 排尿時に痛く、何回もトイレにいく
  • 排尿痛とともに尿道から膿が出る
  • なんか排尿痛がある

など、排尿症状に問題
ある症状の方

検診で異常を指摘された

  • 尿潜血が陽性と言われた
  • PSAが高いと言われた
  • 超音波で腎臓に異常があると言われた

など、検査結果に問題
ある症状の方

病気について

ここでは、泌尿器科における代表的な疾患を解説しています。

前立腺肥大症

前立腺は、膀胱の下で尿道を取り囲むようにして存在する臓器です。前立腺から分泌される前立腺液は、体外に射精された精子を保護しエネルギーを補充する働きがあります。
前立腺は内腺と外腺に分かれており、内腺が腫大するのが前立腺肥大症で、日本人男性の80%が前立腺肥大症になるといわれています。罹患率は加齢とともに高くなり、50歳代より急速に増加します。原因として、加齢・ホルモン・動脈硬化・肥満、高血圧・遺伝、炎症等が考えられていますが、明らかな原因はわかっていません。
尿道閉塞により直接的に出難くなる症状と、膀胱内圧上昇から影響を受けた膀胱の機能異常に伴う症状(頻尿や切迫性尿失禁)が加わり、ひとりひとりに異なる複雑な症状を呈するようになります。
一般例に以下のような症状があります。

  • 1. 排尿開始遅延:出るまでの時間が長いこと
  • 2. 尿線細小:尿線が細く、チョロチョロしか出ない状態。
  • 3. 尿線分裂:尿が散るために便器を汚してしまう状態。
  • 4. 排尿終末時滴下:尿の最後の方がポタポタしか出ない状態。
  • 5. 残尿感:排尿直後にまだ出し足りない感じがすること。
  • 6. 排尿後尿滴下:排尿後に尿道に残っていた尿が少量漏れるもの。
  • 7. 尿意頻拍:常に尿意が襲ってくる状態
  • 8. 頻尿:頻繁な尿意のために足繁くトイレで排尿すること。
  • 9. 夜間頻尿:就寝してから排尿のために何度もトイレに足を運ぶこと。
  • 10.尿閉:尿が全く出なくなる(アルコールや風邪薬に注意)。

診断は、超音波で行います。大きさや残尿をチェックします。問題は残尿であり、50mL未満が許容範囲です。また男性で最も多いがんとなった前立腺がんの否定が重要で、PSA(前立腺特異抗原)という血液検査をします。
前立腺肥大症があっても、日常生活に不便を感じていなければ治療は不要です。排尿症状や残尿があれば治療が必要となります。治療は内服薬と手術があります。現在は尿道を拡げて尿を出しやすくする薬剤、前立腺を小さくする薬剤が主体です。
一方手術療法は経尿道的手術が標準です。電気切除やレーザーなどがあります。薬剤を使用しても残尿が多い場合や尿が出ない場合に必要です。

前立腺がん

前立腺は、膀胱の下で尿道を取り囲むようにして存在する臓器で、前立腺液は体外に射精された精子を保護しエネルギーを補充する働きがあります。
前立腺は内腺と外腺に分かれており、内腺が腫大するのが前立腺肥大症で、前立腺がんは主に外腺から発生します。現在、男性の中では最も増加率が高いがんとなっています。平成の間で8倍増えており、有名人も多数罹患しています。
原因は不明ですが、遺伝性が強いのは確かです。3親等以内に一人いれば4倍、二人なら12倍という報告もあります。
初期には勿論症状はありません。進行すると排尿障害、頻尿、排尿痛や血尿などを生じますが、前立腺肥大症と区別することはできません。
診断に関しては、PSA(前立腺特異抗原)という血液検査が非常に有用です。自治体によっては住民検診がなされています。これはクリニックでも簡単にできる検査です。そして、PSA、直腸診、MRI(放射線被爆のない画像診断:当院では隣接する谷川脳外科と連携)、そして最終的には前立腺生検という順で検査を行います。
がんが判明したら、どこまで拡がっているかという病期診断をします。これはCT(当院では隣接する谷川脳外科と連携)、骨シンチ、あるいはPET-CTで行います。悪性度が低ければ、骨シンチは省略します。
前立腺がんは一般的には進行が比較的緩やかであり、年齢、健康状態、病期、悪性度、そして患者さんの希望を総合して治療法を決めます。手術療法、放射線療法(重粒子線治療も放射線療法の一つです)、内分泌療法が主な治療法です。
手術についてはロボット支援手術が増加しており(私も福山市民病院でロボット支援手術を行っていました)、放射線療法も近年非常に進歩しています。ただし、これらの治療法は全員にできるわけではありません。
内分泌療法は、男性ホルモン分泌を抑制する皮下注射、男性ホルモンが前立腺に入らないようにする内服薬、あるいはこれらの併用で、通院で簡単に行えます。手術や放射線療法と違ってどんな方にでもできます。内分泌療法は教科書的には根治療法ではありませんが、実臨床では根治と同じような状況を多く経験します。また非常におとなしいがんの場合、治療せずにPSAで経過観察するという方法も可能となりました。
どの治療法を選択するかについては、十分に時間をとってじっくりと相談させて頂きたいと考えております。

膀胱がん

膀胱粘膜から発生する膀胱がんは高齢男性に多く、原因の一つに喫煙があります。組織学的には尿路上皮がんと言われています。自覚的には、肉眼的血尿が殆ど唯一の症状であり、稀に排尿痛、頻尿が生ずることがあります。
膀胱がんは大きく筋層非浸潤がんと筋層浸潤がんの2つに分類されます。筋層非浸潤がんは、がんが粘膜や粘膜下層までで筋に達していない浅いものです。一般的には経尿道的腫瘍切除術といってお腹を切らない手術で対処できます。ただし、膀胱内に何回も再発することがあり、術後に薬(抗がん剤やBCG)を膀胱内に注入することもよく行われます。ただし、生命を脅かすことは少ないタイプです。一方筋層浸潤がんは生命を脅かします。これはがんが深く筋肉に達しているか、あるいはそれ以上に浸潤して膀胱の外に出ているがんです。リンパ節や他臓器に転移をする場合もあります。標準治療は膀胱全摘除術であり、この場合尿路変向(尿が出てくる部位が変わる)が必要になります。また手術前後に化学療法(抗がん剤を投与すること)を加えることも広く行われています。最近、一部の症例に免疫チェックポイント阻害剤(本庶先生のノーベル賞で有名になった薬剤)が使用できるようになりました。
診断は検尿、超音波、尿細胞診(尿の中にがん細胞がないかどうか)、そして膀胱鏡検査で確定します。膀胱鏡は、かつては非常に痛い検査でしたが、現在では軟性鏡が普及して格段に楽になっています。勿論当院は軟性鏡で行います。確定されたら、がんがどこまで拡がっているか、上部尿路(腎盂・尿管にも同じ種類のがんが出来ていることがあります)に問題はないかをCT(当院では隣接する谷川脳外科と連携)でチェックします。必要であればがんが深いか浅いかをMRIで調べます。
膀胱がんの80%は浅い筋層非浸潤がんであり、経尿道的腫瘍切除術で一旦終了となります。しかし膀胱内再発が多く、3か月に1回の膀胱鏡検査が必要となります。膀胱全摘後は、転移がおこっていないかどうかをチェックする定期的なCTが必要となります。

過活動膀胱

過活動膀胱とは、「尿意切迫感を必須とした症候群で、通常は頻尿と夜間頻尿を伴う」と定義されています。分かりやすくいうと、「尿にいきたいと感じたら、我慢するのが難しい、漏れてしまうことがある」という症状があれば過活動膀胱ということになります。
ただし、急性膀胱炎など炎症が生ずると一時的に尿意切迫がおこります。したがって炎症性疾患(膀胱炎、前立腺炎、間質性膀胱炎)、悪性腫瘍(膀胱がん、前立腺がんなど)、結石(膀胱結石、尿道結石、下部尿管結石)、子宮の疾患、薬剤の副作用(ある喘息の薬)、などを除外する必要があります。
40歳以降から増え始め、国内で約800~1000万人の患者さんがいると推測されています。脳出血や脳梗塞、パーキンソン病など、神経回路に異常が生じたものと原因不明なものがあります。実際には原因不明な場合が多い状況です。
診断は、検尿、超音波検査が主体で、簡単に行えます。前立腺がんが疑われればPSA(前立腺特異抗原)検査、膀胱がんが疑われれば尿細胞診(尿の中にがん細胞がないかどうか)や膀胱鏡が必要になります。
治療は内服薬が主体です。膀胱の収縮を抑える「抗コリン剤」や「β3受容体刺激剤などを使用します。多くの薬剤があり、自分にあった薬剤を見つける必要があります。最近新しいβ3受容体刺激剤が使用可能になりました。
一方残尿には注意する必要があります。特に前立腺肥大症がある場合には、薬剤使用によって尿閉といって尿が全く出なくなることがあります。
最近では生活指導(減量や水分摂取について)や膀胱訓練などの行動療法の重要性も指摘されています。生活指導の中では、減量が非常に有効です。肥満女性に食事と運動療法で減量を行った大規模試験による解析では、5-10%以上体重減少した群ではすべてのタイプの尿失禁回数が減少しました。

腎盂・尿管がん

腎盂・尿管がんとは、腎臓からの尿を膀胱まで送る腎盂や尿管にがんが発生したものです。組織は尿路上皮がんであり、膀胱がんと同じです。ですからどこにできるか(膀胱か腎盂・尿管か)によって名前が変わるだけで同じがんとも言えます。膀胱がんと同じで高齢男性に多く、原因の一つに喫煙があります。
症状も肉眼的血尿が殆どです。尿管ががんで閉塞することで水腎症(尿の流れが悪く腎盂に尿がたまった状態)となることがありますが、結石と違ってゆっくりと進行するので痛みが起こることは少ないようです。
診断には検尿、超音波、そしてCTが必要です。当院は隣接する谷川脳外科と連携して速やかなCTが可能です。CTに異常があり、尿細胞診(尿の中にがん細胞がないかどうか)でがん細胞が証明されれば診断が確定しますが、そうでない場合は、逆行性尿路造影(膀胱鏡を使用し、尿管内に細い管をいれて尿を採取したり、造影剤を注入してレントゲンをとる検査)、場合によっては尿管鏡による精査(尿管内を観察し、組織を採取する検査:麻酔が必要なため入院して施行)が必要になります。
治療の基本は手術療法であり、患側の腎~尿管を全て摘出する腎尿管全摘除術が標準治療です。早期の場合は腹腔鏡補助下の手術が可能ですが、進行がんでは開腹手術(リンパ節郭清を行う)が良いとされています。場合によっては手術前後に化学療法(抗がん剤を投与すること)を加えます。最近、一部の症例に免疫チェックポイント阻害剤(本庶先生のノーベル賞で有名になった薬剤)が使用できるようになりました。
一方、非常に初期でがんの悪性度が低い場合には、腎温存手術を選択できる場合があります。
術後は膀胱がんが発生しやすいため(がん発生から治療までの期間、腎盂や尿管からがん細胞が膀胱に落ちてきており、膀胱に播種している場合があり)、定期的な膀胱鏡検査が必要です。また転移出現チェックの定期的CTも必要です。

尿路結石

尿路結石には、腎結石、尿管結石、膀胱結石、前立腺結石、尿道結石があります。前立腺結石以外は全て腎臓でできた結石です。腎結石が尿管に落ちれば尿管結石、膀胱に落ちて留まって大きくなれば膀胱結石、膀胱結石が尿道に詰まれば尿道結石になります。男性では7人に1人、女性では15人に1人が一生に一度は尿路結石になるといわれています。
多くの結石の原因は不明ですが(最近は生活習慣病との関連が指摘されている)、上皮小体機能亢進症や高尿酸血症など結石を作りやすい疾患があります。また特殊な結石では、遺伝性がはっきりしているものもあります。
腎結石は通常痛みはありません。肉眼的血尿は時々出現します。しかし尿管結石になると激しい痛みが起こります。七転八倒することもあります。勿論肉眼的血尿も起こります。膀胱結石では頻尿や肉眼的血尿、排尿痛がおこります。問題は尿管結石による水腎症(尿の流れが悪く腎盂に尿がたまった状態)に細菌感染が加わった場合です。敗血症、そして多臓器不全となり亡くなる方もいます。たかが石、されど石です。
超音波や通常のレントゲンも広く行われていますが、最も確実な診断方法は単純CT(当院では隣接する谷川脳外科と連携)です。ただしレントゲンより被爆が多くなります。
治療は、自然排石を待つか手術かになります。自然排石を促す薬剤には、α遮断薬(前立腺肥大症の薬剤)、カルシウム拮抗剤(高血圧の薬剤)があります。
腎結石と尿管結石の手術は、体外衝撃波結石破砕術(ESWL:体の外から衝撃波を結石に当てて結石を破砕)、経尿道的結石破砕術(TUL:尿道から細い尿管鏡を入れて結石破砕)、経皮的結石破砕術(PNL:背中から直接腎に内視鏡を入れて結石を破砕)、腹腔鏡下切石術、開放手術があります。結石の大きさ、位置、患者さんの状態、などによって治療法を選択します。
膀胱結石に対しては、経尿道的結石破砕術が一般的です。

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎は、「膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する疾患」です。その病型は潰瘍型と非潰瘍型に大別され、2015年7月に潰瘍型間質性膀胱炎が難病指定されました。通常の「膀胱炎」とは全く異なる疾患です。明らかな原因はまだわかっていません。
典型的な症状は膀胱痛、頻尿ですが、症状は多岐にわたり、疼みを訴えない(無意識に疼みが出現するまでに早めに排尿するようにしている)症例も多くみられます。疼痛がないときでも、頻尿が著しい場合や抗コリン剤などの治療の効果が得られない過活動膀胱の場合、間質性膀胱炎の可能性があります。
診断には排尿日誌は必須です。1回尿量の減少が認められます。膀胱鏡では、ハンナ潰瘍や、膀胱内の五月雨様出血がみられたら診断は確定です(筆者はこれまで何回も経験している)。ただしこのハンナ潰瘍は、膀胱鏡のみでは膀胱上皮内がんと区別がつかず、尿細胞診(尿の中にがん細胞がないかどうか)検査でがんの否定が必要です。
治療は内服薬(現在保険適応の薬剤はないが、某製薬会社が臨床試験を行い、将来使用可能になる予定)、膀胱内薬液注入療法(保険適応外)、膀胱水圧拡張療法(可能な施設が限定)、ハンナ潰瘍の電気凝固、等があります。膀胱水圧拡張療法、ハンナ潰瘍の電気凝固は、通常は手術室で麻酔下に行います。ハンナ潰瘍の電気凝固は高い鎮痛効果が得られるといわれています。

腎細胞がん

腎細胞がんとは腎実質に発生する悪性腫瘍の中で最も多いもので、尿細管細胞から発生するとされています。喫煙、肥満、高血圧といった因子が複合的に関与すると考えられています。一方透析患者に生じる後天性嚢胞性腎疾患やある種の遺伝疾患には高率に発生するので注意が必要です。
かつては肉眼的血尿、腹部腫瘤、などの症状で見つかっていました。しかし現在ではCT、超音波が普及したため、半数以上は偶然に(自覚症状なし)発見されるようになりました。検診での超音波で判明する場合、他疾患の診断、経過観察中のCTで偶然に判明する場合、などです。しかし、今でも肉眼的血尿から判明する症例、進行して肺転移や骨転移から判明するケースもあります。
診断は造影CTで行います。
腎細胞がんは薬剤(抗がん剤など)、放射線の効果が低いのが特徴です。極端に言えば、手術による摘出が唯一の治療法ということになります。また腎細胞がんの場合は、転移があっても原発巣である腎を摘出した方が治療成績の良いことが判明しています。
さて最近は偶然に判明する症例が多く、このような場合はがんが小さいことがあります。がんが小さい場合には腎臓を全部摘出せず、がんの部分だけを取り除く腎部分切除術が可能です(長径が4cm以下のがんを小径腎がんと呼び、現在の診療ガイドラインでは腎部分切除が最も推奨される手術方法)。
従って手術療法には、腎を全て摘出する根治的腎摘除術とがんだけを摘除する腎部分切除術があります。また開腹手術と腹腔鏡手術があります。現在は腎部分切除に手術支援ロボット使用が認められるようになっています。
進行したがんには手術以外に薬物療法が必要です。かつてはインターフェロンが中心でしたが、今は限られた症例にしか使用しません。現在は分子標的薬という薬剤が多く使用されています。さらには免疫チェックポイント阻害剤(本庶先生のノーベル賞で有名になった薬剤)が使用できるようになりました。
そして「根治切除不能または転移性のがんの一次治療として、免疫チェックポイント阻害剤同士の併用が承認されました。

     

腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁はほとんどが女性に生じます。男性に生じる場合は、前立腺がんの術後か、脳脊髄変性疾患による神経因性膀胱、などを考慮する必要があります。以下、女性について述べます。
腹圧性尿失禁は、運動時やくしゃみ、または咳の際に、不随意に尿が漏れるという状態です。日常生活においては、お互いに「恥ずかしいので人には言わない」という場合もあり、実際にはかなり多いと考えています。しかし、だらだら常に漏れているというような持続性尿失禁の場合は、尿管・膀胱膣瘻(尿管や膀胱と膣とが小さな穴でつながっており、常に膣に尿が出てくる状態)などの可能性もあり、精査が必要です。
治療には、行動療法、薬物療法、手術療法があります。
まず行動療法では減量が非常に有効です。肥満女性に食事と運動療法で減量を行った解析では、5-10%以上体重減少した群ではすべてのタイプの尿失禁回数が減少しています。
次に最もよく行われている理学療法は骨盤底筋訓練(体操)です。骨盤底筋の筋肥大をおこすことにより、腹圧時の骨盤底筋収縮の強度とタイミングを向上させるといわれています。即効性はないので、我慢強く行うことが重要です。
薬物療法として保険適応があるのは、β2アドレナリン受容体刺激薬の塩酸クレンブテロールのみです。外尿道括約筋の収縮を増強させる効果を有するといわれています。
手術療法には色々ありますが、TVT法、TOT法が主流です。これは膣を少し切開して、そこからテープを中部尿道後面に留置する方法です。腹圧がかかった時は、膀胱尿道が後下方に移動するのですが、テープがあることで尿道が折れ曲がり(尿道屈曲)尿禁制が得られるとされています。ただし、腸管損傷や血管損傷、排尿障害、などの合併症も起こりえます。
どの治療法にするかは、症状の程度や年齢、他の病気の有無、本人の希望などを総合して決定します。がんのように命を奪う疾患ではないので時間的余裕があります。

骨盤臓器脱

これは女性だけの疾患です。
骨盤臓器脱は骨盤内にある子宮、膀胱、直腸および小腸などが膣から脱出する疾患です。陰部の不快感や下腹部の不快感に加えて、排尿障害や排便障害および性機能を障害するため、生活の質を著しく低下させる、中高齢女性にとって極めて重要な疾患です。
治療には、保存療法と手術療法があります。
骨盤底筋訓練(体操)が有効であるという報告は多くあります。骨盤内臓器の下垂を改善させる場合もありますが、主な役割は骨盤臓器脱の増悪を抑制することと、下垂感、排尿および排便に関わる症状の改善をもたらすことです。骨盤底筋訓練は、即効性がないために数ヶ月以上続けることが重要です。
また膣内装具であるペッサリーを膣に挿入して骨盤内臓器の脱出を防ぐ方法があります。ペッサリーとは直径5-10cm程度のドーナツ状の膣内挿入器具です。ペッサリーの合併症としては膣壁びらんや帯下の増加などがあり、2?3ヶ月ごとの交換が必要です。
手術療法としては、子宮脱だけであれば、古くから行われている単純子宮摘出、膣縫縮術があります。新しい手術としては、経腟メッシュ手術(膣を切開して、メッシュで弱くなった支持組織を置き換える)、腹腔鏡下骨盤臓器脱修復術があります。後者は、腹腔鏡下にメッシュを用いて膣尖部または子宮頸部を仙骨に固定する手術方法です。若い方で、性機能を重視される場合などに選択されます。

性感染症

性感染症には、以下のものがあります。梅毒、淋菌感染症、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、性器伝染性軟属腫、腟トリコモナス症、細菌性腟症、ケジラミ症、性器カンジダ症、非クラミジア性非淋菌性尿道炎、軟性下疳、HIV感染症/AIDS、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、赤痢アメーバ症などです。
泌尿器科では、尿道炎(淋菌感染症、クラミジア感染症および非クラミジア性非淋菌性尿道炎)、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマが多く、時に梅毒があります。
尿道炎は、まずは淋菌性尿道炎とそれ以外の原因菌による非淋菌性尿道炎に分けます。次に非淋菌性尿道炎をクラミジアによるものと、それ以外の非クラミジア性非淋菌性尿道炎に分けます。淋菌性は発症が早く、排尿痛などの症状も強いため症状からの推測が可能ですが、クラミジアとの混合感染も多く、ともに核酸増幅法検査で確認します。また無防備なオーラルセックスなどにより淋菌やクラミジアが咽頭に感染していることもあります。治療については、淋菌感染症にはセフトリアキソン点滴静注、あるいはスペクチノマイシン筋注、のそれぞれ単回投与が推奨されています。当院ではセフトリアキソン点滴静注を行っています。クラミジア尿道炎には、アジスロマイシン4錠1回投与が推奨されています。
性器ヘルペスウイルス感染症は、単純ヘルペスウイルス1型または2型による感染症です。初めて感染するとき(初感染)と、すでに神経等に潜伏していたウイルスの再活性化によるとき(再発)があります。一般的に初感染は症状が強く、発熱や鼠径部リンパ節腫大などの全身症状を伴うことが多いですが、再発では症状が軽く、性器に浅い潰瘍性または水疱性病変を形成します。治療は抗ヘルペスウイルス剤です。
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス感染症です。男性では陰茎の亀頭、冠状溝、包皮、陰嚢、女性では大小陰唇、会陰、腟前庭、腟、子宮頸部、男女で肛門周囲などに乳頭状、または鶏冠状の疣贅を認めます。痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません。診断は視診で行います。治療に反応しない場合や色素沈着、硬結や潰瘍を伴うときなどは、確定診断のため生検することがあります。治療は、外用薬のイミキモドクリーム、凍結療法および電気焼灼が第一選択です。
梅毒に対しては、ペニシリン系薬剤の内服を行います。病期に応じて4~8週内服します。最近日本で梅毒が急増しており大問題となっています。広島でも同様に急増しており、注意が必要です。

膀胱炎

膀胱炎は膀胱内に細菌が増殖して起こります。単純性膀胱炎と複雑性膀胱炎に分類されます。
単純性膀胱炎は若い女性に多く、たまたま菌が尿道から入って膀胱内で増殖しておこるもので、抗菌剤で容易に治ります。
複雑性膀胱炎は、前立腺肥大症による残尿に菌が増殖したり、膀胱結石に菌が付着して増殖したり、あるいは膀胱がん表面に菌が付着・増殖しておこるもので(このような病気を基礎疾患と称する)、菌の排除が難しい膀胱炎です。このような複雑性膀胱炎は高齢男性に多くおこります。菌の排除が難しいため、抗生剤を投与してもなかなか治らないか、治ってもすぐ再発します。
膀胱炎は非常に頻度が高いですが、ある程度の年齢になったら、基礎疾患の有無をチェックすべきでしょう。超音波で比較的簡単にできます。当院では男性の膀胱炎ではほぼ全例、女性では50歳以上には超音波で基礎疾患の有無をチェックすることにしています。
時々注射を希望する方がおられますが、通常はその必要はありません。内服の抗菌剤で十分です。ただし、中にはほとんどの内服抗生剤が効かない菌が原因の場合があります。この時は例外的に点滴をします。
一方38℃以上の熱が出た場合はどうでしょうか?膀胱炎は決して発熱しませんので、発熱した場合は腎に菌が入ったか(急性腎盂腎炎)、男性では前立腺に菌が入ったか(急性前立腺炎)です。発熱がある場合は膀胱炎ではありません。強力な治療が必要であり、抗菌剤の点滴を行います。
また基礎疾患が無いのに膀胱炎を繰り返す女性がおられます。近年の研究では、膣にある防御機構が破綻していることが原因の一つとされています。閉経で女性ホルモンが低下すると、膣に常在していた乳酸菌の一種が少なくなり、直腸からの大腸菌が尿道に達しやすくなります。また萎縮性膣炎などで粘膜が障害されると、そこに炎症の起炎菌が増殖する可能性も指摘されています。そこで膣内に女性ホルモン製剤(膣錠)を入れる治療を、最近開始しました。

精巣腫瘍

精巣腫瘍は精巣にできるがんです。多くのがんが高齢になるにつれて増えるのに対して、精巣腫瘍は20歳~30歳台の若い人に多く発生します。原因はまだ分かっていません。
症状は「無痛性の精巣腫大」です。多くの場合は痛みがなく、精巣が硬く大きくなります。放置しておくと、徐々に大きくなり、そのうちリンパ節や肺に転移していきます。
治療はまず「高位精巣摘除術」です。これは陰嚢を切開するのではなく、鼠径部を切開して、精巣と精巣に行く血管を長く取る手術です(精巣を栄養する血管は腎臓の近くから出る)。これでどのような種類のがんか調べます(セミノーマといって比較的おとなしいタイプとそれ以外の非セミノーマに分類)。この手術と前後して全身CTを行い転移の有無を検査します。
どのようながんか、それから転移していないか。転移ならどの程度か。これらによってその後の治療法を決定します。転移がないなら、通常は画像診断による経過観察を選択します。転移があればまずは化学療法(抗がん剤を投与すること)を行います。精巣腫瘍は、がんの中でも、最も抗がん剤が有効ながんの一つです。少々転移があっても治癒するという印象を持っています。
それ以外は個々の状況に応じて、手術(後腹膜リンパ節郭清といって非常に大きな手術)や放射線療法なども考慮していきます。
重要なことは、陰嚢内容に異常を感じたら、恥ずかしがらずにすぐ泌尿器科を受診することです。私の以前の病院での経験ですが、高校生で恥ずかしくて1年以上も異常を放置したため全身に転移しており、後腹膜リンパ節郭清を併用して多くの抗がん剤を使用しましたが、亡くなった、というのがあります。

前立腺炎

前立腺炎は大きく急性前立腺炎と慢性前立腺炎に分けられます。
急性前立腺炎は、前立腺に細菌が入り込んで、高熱、排尿困難、排尿痛などを起こす疾患で、診断は比較的容易です。時々風邪と間違われて治療を受けていることもあります。抗生剤の点滴と内服を併用します。時に重症で入院が必要な場合もあります。また実際には結構多いので注意が必要です。発熱と急な排尿困難があれば、可能性が高くなります。
一方慢性前立腺炎は分かりにくい疾患です。学術的には色々に分類されますが、日常診療で多いのは、感染が証明されない慢性前立腺炎です。何となく下腹部に不快感がある、陰嚢の奥の方に不快感がある、排尿時に何となく不快感がある、あるいは頻尿や残尿感、などの症状です。通常検尿は正常で、形態的には腎、膀胱、前立腺に異常はなく、直腸診で前立腺を圧迫すると痛みを感じます。原因は明らかではなく、尿の前立腺内への逆流、動脈硬化による虚血、微生物の感染、等が考えられています。
治療は薬剤が中心になります。深酒や長時間の座位で症状が悪化します。

男性更年期障害

女性特有の症状と思われてきた更年期障害。近年では男性にも発症することが認知され、「自分もそうかも!?」と、診療を受ける人が増えています
男性更年期障害とは、男性ホルモンの分泌低下が原因で起こる不調のことです。男性更年期障害は別名「LOH症候群」とも呼ばれ、男性ホルモンである「テストステロン」の減少が主な原因といわれています。女性は閉経期をはさんだ数年間に多く見られるのに対して、男性は40代から発症することもあり、放置すれば長期間にわたり患うことも珍しくはありません。
男性ホルモンは性的な部分だけでなく、精神的にも影響を及ぼす要素があるため、性機能低下、性欲減退、などのほかに、ほてり、動悸、頻尿、やる気が出ない、めまい、不安を感じる、眠れない、イライラする、集中出来ないといった心の不調をきたすことがあります。落ち込みがひどくなると、自分自身も家族も「うつ病」だと勘違いしてしまうケースもあります。
医師による問診と、血液検査で男性ホルモン値を計測することによって診断することができます。主な治療法は、テストステロンを筋肉注射で補充する方法で、40歳以上でテストステロンが低下している場合に行います。
症状に心当たりがある場合は、一人で悩まず、一度専門医で検査を受けることをおすすめします。

夜尿症

夜尿症は、夜間の尿産生メカニズムの異常や夜間の蓄尿メカニズムの異常、あるいは睡眠覚醒の異常等の様々な要因が複雑に関与した症候群とされています。
かつては自然経過を見守る考えが強かったようですが、近年は、本人への心理的負担の大きさ、一部の症例では成人への移行が明らかにされ、一般的に就学以後も持続する夜尿症には治療を行うべきとされています。
まずは基礎疾患(先天的な異常)が無いことを確認し、生活指導(減量や水分摂取について)、そして薬物療法を行います。
夜尿症に対する薬物療法には、三環系抗うつ剤、抗コリン剤、抗利尿ホルモン剤、などの報告がみられます。そのうちメタアナリシスにより有効性が証明されているものは、三環系抗うつ剤と抗利尿ホルモン剤のみです。
現在では、抗利尿ホルモン剤が第一選択となっています。当院でも、抗利尿ホルモン剤から開始します。

神経因性膀胱

神経因性膀胱とは、膀胱を制御する神経のどこかに障害が起こることで、膀胱の働きに異常をきたす疾患です。脳、脊髄、脊髄から出る神経のどこに障害がおこるかで症状が異なります。
障害には、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの変性疾患、脊髄損傷などの外傷、糖尿病、子宮や直腸の手術によって生じる末梢神経障害などがあります。
症状は非常に複雑ですが、簡単には、尿が出難いか、もれるかです。
治療法は、薬物療法と自己導尿があります。薬物療法には、尿を出やすくしたり、頻尿や失禁を抑える薬剤がありますが、効果は不十分な印象です。どうしても尿が出ないときは、1日に何回か、自分で膀胱に管を入れて尿を排出する自己導尿が必要になります。
自己導尿もできず、どうしようもない時には、「カテーテル留置」といって常に膀胱に管を入れておくようになります。