膀胱がんについて:その1
最近ニュースで、あのミスター赤ヘル:山本浩二解説者が手術を複数回行った、というのを知りました。肺がんと膀胱がんだそうですね。
さて膀胱がんについては、「診療案内」の「病気について」に載せてあります。症状として最も多いのは、肉眼的血尿、それも痛みも何もない血尿です。我々泌尿器科医は、血尿と聞くと、膀胱がんを想定するようになっています。診断は超音波や膀胱鏡(細い曲がることのできる内視鏡で膀胱内を観察する検査)で行います。膀胱がんは、その深さによって大きく2つに分けます。がんが膀胱の筋肉まで達していない浅いものと(便宜上、表在がんと呼びます)、筋肉に食い込む、あるいは筋肉の外まで達する深いもの(便宜上、浸潤がんと呼びます)です。
約80%は表在がんであり、その多くはお腹を切ることなく、尿道から内視鏡を入れて手術が出来ます。短期間の入院でよく、言わば軽いがんです。問題は再発といって膀胱内に同じような腫瘍ができやすいことです。従って、術後は3か月に1回膀胱の中を観察する必要がありますが、中には膀胱鏡のたびに再発を認める人もあります。この嫌な再発を減らす方法としては、術後に膀胱内に薬液を入れるという治療があります。薬液は、抗がん剤とBCG(あのツベルクリン反応に陰性だった場合に打つBCGです)があり、BCGがより強力です。抗がん剤よりBCGの方が副作用がやや多く、比較的おとなしいタイプには抗がん剤を使用し、危険(再発の可能性がより高い)なタイプにはBCGを使用します。BCGは当院でもよく行っています。週に1回、6~8週連続で行います。
一方浸潤癌は大変です。標準治療は膀胱全摘、つまり膀胱を取らなくてはなりません。じゃあ膀胱を取ったら尿はどこから?大きく3種類あります。尿管を直接皮膚と吻合する「尿管皮膚廔」、尿管を小腸に吻合し、その腸管の端を皮膚と吻合する「回腸導管」、小腸の一部を使って膀胱のような袋を作り、尿管、尿道を吻合する「代用膀胱」です。この中では回腸導管が最も多く造られています。尿管皮膚廔と回腸導管はいわば垂れ流しであり、お腹にパウチという袋を付け、尿はその袋に溜まるようにします。一方代用膀胱は袋を付ける必要はなく、尿道から尿が出ます。自然で良いですが(そして、温泉に行けると思います)、尿漏れや、逆に尿が自力で出なくなる、という問題が起こることがあります。また手術時間が長くなるため、比較的若い人でないと難しいと思います。
その2に続きます。