山県郡医師会学術講演会 4
今回は過活動膀胱です。過活動膀胱とは、急に我慢できないような尿意が襲ってきてトイレに駆け込むことがあり(尿意切迫感)、時々間に合わず漏らしてしまう(切迫性尿失禁)という状態です。トイレが近いと漏れを避けることができる場合があり、切迫性尿失禁は診断に必須ではありません。通常は昼間や夜間の頻尿も伴います。40歳から増え始め、実際には800万~1000万人の方が困っているという統計があります。なかなか他人に相談できない症状ですね。
原因のわかっているものは、脳梗塞や脳出血、パーキンソン病など、膀胱の働きを調節する神経系が障害を受けた場合です。これらは神経因性膀胱とも言います。それ以外には、加齢、前立腺肥大症などによる膀胱への血流の低下、女性ホルモン低下、骨盤臓器脱(膣から子宮や膀胱、直腸などが脱出してくる疾患)、自律神経活動亢進などが考えられていますが、原因不明であることも多いのが実情です。
過活動膀胱の症状である切迫感や尿失禁、頻尿は膀胱炎、膀胱癌、前立腺癌、膀胱結石などでも起こります。従ってこれらの疾患がないことを確認することが診断には重要です。検尿と超音波検査(腎臓、膀胱、前立腺を観察して異常の有無を確認する検査、被爆は全くありません)は必須でしょう。場合によっては、直腸診(前立腺癌や炎症の有無を調べる)、PSA検査(前立腺癌の有無を調べる)、膀胱鏡(膀胱癌の有無を調べる)などを加える必要があります。
治療には、行動療法と薬物療法があります。行動療法には、体重減少=減量(これは全ての尿失禁に効果があります)、膀胱訓練(排尿したくなった時、少しの間我慢する)、骨盤底筋群体操(肛門を締めたり緩めたりする)があります。ただし、治療の中心は薬物療法です。β3受容体作動薬と抗コリン薬との2種類が使用されます。膀胱を弛緩させたり、異常な膀胱の収縮を防ぐ作用があります。個人的には副作用の少ないβ3受容体作動薬から開始し、不十分な場合には抗コリン薬に変更したり、あるいは両者を併用するという治療を行います。長期間薬物療法を続けても十分な効果が無い場合には、ボツリヌス毒素を膀胱壁内に注入するという治療が保険適応になりました。この治療が必要と判断した場合には、この治療が可能な病院に紹介致します。
次回は間質性膀胱炎です。