風邪、について
現在新型コロナウイルス感染症で大変な状況です。首都東京では連日感染者数が増加しており、いつ非常事態宣言が出るのだろう、と思います。また米国やヨーロッパではとんでもない状況になっています。考えられない状況です。この新型コロナウイルス感染症は、現時点では、80%が軽症、15%が重症、5%が極めて重篤になる、と言われています。恐ろしいのは、初期には通常の風邪と区別がつかないことです。
風邪は、病気の代表みたいなものです。でも恥ずかしながら、私は苦手でした。泌尿器科専門なので、あまり診療経験がなかったのも原因の一つでしょう。けれども年に2回程度、可部夜間急病センターに出るようになり、これではいかんと。それで、今更ながら勉強しなおしていました。
風邪というのはウイルスによる感染症であり、そのウイルスは200種類以上あるとされます。どのウイルスかなんて調べるのは不可能で、またウイルスであるので抗菌剤(抗生物質)は無効です。ほとんどは自然軽快していきます。というか、風邪のウイルスを殺す薬剤は存在しません。今世界中で問題になっているコロナウイルスについても、新型でなければ、風邪を起こす代表的なウイルスなのです。つまり自然に治ってしまうのです。
ウイルス感染と細菌感染の違いを分かりやすく。ウイルス感染は、多くの場所に感染症状があり、多くの症状(例えば、咳や鼻水、喉の痛み、熱、など)が出ます。一方細菌感染は、原則として一つの臓器への感染で、症状も狭い。これがポイントだそうです。例えば、細菌性肺炎では咳や痰はでますが、鼻水は出ません。
典型的な風邪は、「ウイルスによる上気道炎」であり、咳、鼻水、喉の痛み、が同時期に、同程度存在する、という状態です。これが全てなら簡単ですが、そうはいかない。鼻水などの鼻の症状が主な状態、喉が痛いのが主な症状、咳が主な症状、な風邪もあり、また、実は風邪ではなく、細菌感染であった、ということもあるので、奥が深い・・、ということになります。
さらには、若い人と高齢者では状況が違うということです。高齢者は長く生きているため多くのウイルスと接しており、免疫ができていて風邪にはかかり難い。また各臓器が弱っているため(若い人に比べて、という意味です)、典型的な症状は出難い。そして肺炎などの重篤な病気を引き起こしやすい、つまり、診断が難しいということです。また、若い人には抗生剤は無意味ですが、高齢者では潜在的に肺にダメージがあるため(だから肺炎を起こし易い)、抗生剤の意義がやや高まる、ということです。
元に戻って、新型コロナウイルス感染症に立ち向かうには、通常の「風邪」の診療について、しっかりした知識が重要になると思われます。
岸田直樹先生「だれも教えてくれなかった風邪の診かた」:医学書院 を参考にしました。